データと向き合うときに大切にすべき3つのポイント
データ分析・活用はビジネスを展開する上で非常に重要です。なぜ、データが大切なのか。それは、データがビジネスにおける成功の再現性を担保する役割を担っているからです。
事業をやっていれば、一発大ヒットのようなものは起こり得ます。それによって大きく儲けることもあるでしょう。しかし、一発ヒットでは「儲け続ける」ことはできません。お笑い芸人を例に考えるとわかりやすいです。芸人の中には、一発屋芸人と呼ばれる人たちがいます。彼らは、ギャグやネタで大きなヒット(一発)を当てました。しかし、その地位をキープしている人は皆無です。誰もがテレビの露出が減っていき、それに伴い収入も減っていく運命にあります。(一発当てたギャグやネタを使って地方の営業等で細く長く生きていく方々は多くいらっしゃいます。それはそれで生存戦略としては正しいことだと思います)
一方で、テレビに露出し続け、安定したポジションにいる芸人さんたちもいます。彼らは自分たちが求められているものを的確に把握し、それを表現し続ける努力をしています。つまりは、テレビ的に欲しいパフォーマンスに対する再現性が高いと言えます。
ビジネスも同様に考えることができます。安定して事業を続けるためには、パフォーマンスに対する再現性が求められるのです。パフォーマンスに対する再現性を高めるために役立つのが、データ分析です。データ分析とは、データとしっかりと向き合い、その裏にある真理を導く創造的なプロセスだと考えています。そこから導いた結果が、自社の強力なノウハウになったり、次の施策への精度の高い仮説につながります。本記事では、データと向き合うときに大切にすべきポイントについて、3つ挙げてみました。
1. まずは分析できる形でデータを収集すること
データ分析をし、精度の高い仮説や新しい知見を導こうとしても、そもそも分析できるようなデータがないということが実は多々あります。
例えば、アルバイトのスタッフが、エクセルに日付とその日の売上を入力していたとします。もし、日付を全角文字で入力していたとすると、それは分析するためのデータとしては不適です。全角文字で入力した日付は、データ上では文字と認識されてしまうため、時系列の分析ができないためです。
今の事例は非常にわかりやすいので、簡単に解消できますが、実際の現場では、データ入力と業務オペレーションが複雑に絡み合うため、問題が複雑になることがあります。何か目的をもって、ある指標を出そうとしても、データ形式がちゃんとしていないために算出できない場合もあるのです。
データ分析の第一歩は、分析できるようにしっかりとデータを整えることだったりします。
2. データに振り回されずに、その裏に潜む因果関係を紐解いていくこと
例えば、とある施策を実行したら、売上上がったという結果が出たとします。通常であれば、その結果を受けてどんどんその施策を拡大すると判断すると思いますが、その判断をする前に、一度立ち止まることができるかどうか、これがデータ活用には重要です。
「相関関係」と「因果関係」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。相関関係とは、ある一方の値が増えたり、減ったりしたときに、もう一方の値も増えたり、減ったりする関係にあることです。Aが多いほど、Bも多い傾向にある場合は、AとBは正の相関関係にあると言ったりします。一方、因果関係とは、2つの事象のうち、片方が原因となり、もう一方が結果となる関係のことです。
先ほどの、「ある施策を実行→売上が上がった」という関係性が成り立ったときにそれが相関関係なので因果関係なのかを冷静に見極める必要があります。例えば、その施策を打つときは、いつもトレンドが高くなる時期であり、売上の増加は施策の効果ではなく、トレンドが上がった結果かもしれません。
仮に売上が上がった原因が実行した施策ではなく、単なるトレンドの変化によるものだとしたら、、、施策を拡大することは誤った判断ということになります。
因果関係か相関関係かを見極めるには、なぜ数値が変化したのか深掘って考えてみることが重要です。よく「なぜ」を5回繰り返せと言いますが、なぜこの数値が変化したのかをしっかりと考えてみましょう。
3. バイアスがかかっていないか気をつけること
データは基本的には客観的なものです。どれだけ望んでも売上という数字が下がってしまうこともありますし、ちょっとテレビに取り上げられただけで爆発的に売上が伸びることもあります。しかし、そのデータを分析する人間にはどうしても「バイアス」がかかってしまうことがあり、主観でデータを判断してしまうことがあります。
バイアスとは、意識的・無意識的に関わらずデータを歪めて捉えてしまうことです。データをみる際に特に気をつけるべきバイアスとして、「確証バイアス」が挙げられます。
確証バイアスとは、ある思い込みがあると、それを支持するような情報ばかりに注目してしまうというバイアスです。確証バイアスが強いと、自分の思い込みに合った情報にしか目がいかず、自分にとってネガティブな情報は無意識的にみないようになります。そうすると、自分の思い込みがどんどん強化されていきます。
例えば、自分が絶対うまくいくと考えている企画があった場合に、メリット・デメリットをしっかりと洗い出して比較検討せずに、自分に都合の良い情報ばかりを集めてしまうことがあります。これは確証バイアスによるものと言えます。
どんなに論理的な人とでもバイアスをゼロにすることはなかなか難しいものです。データをみる際は自分の思考に確証バイアスがかかっていないか、自問自答してみるようにしましょう。
ちなみに、確証バイアス以外にもさまざまなバイアスの存在が指摘されています。バイアスの影響で、正しい意思決定ができなかったりすることが多々あります。バイアスについては別の機会に取り上げたいと思います。
データをうまく使って成功の再現性を高めよう
データ分析はビジネスをしていく上で非常に重要です。「儲け続ける」ことができる事業にするためにしっかりとデータと向き合い、再現性を高めていきましょう。
本記事のまとめ
- まずは分析できる形でデータを収集すること
- データに振り回されずに、その裏に潜む因果関係を紐解いていくこと
- バイアスがかかっていないか気をつけること
「介護福祉ビジネススクール 松田耕一のTOP OF LOCAL」ナビゲーター
専門はマーケティング。もともとは通販会社でゴリゴリのマーケティングをやっていましたが、親の病気や介護をきっかけに、介護福祉の業界に携わるようになりました。マーケティングの視点から介護福祉事業を分析していきます。